だんぼるーの梱包材ブログ
2019年5月22日

思い出の包装紙

 先日、初めて訪れた、喫茶店での出来事です。きれいに包装されたギフトを、隣の空いた椅子に置いたBさんは、喫茶店の外の景色を気にして何度も窓から覗いていました。曇り空が、落ちてきそうなくらい雨の予感がしていました。隣りの椅子のギフトと窓の外の景色を交互に見続けるBさんの待ち人は、Bさんが珈琲を2杯おかわりしても現れませんでした。隣に座っていた私は、Bさんがため息をついたとたんに、目が合ってしまいました。このまま、手にした文庫本に視線を戻そうかと思いましたが、私達2人の他には、来店客の居ない静まり返った店内だったので、私からなんとなく声を掛けてしまいました。「素敵な包装紙ですね。」今考えても、どんな答えを求めていたのだろうかと思うほど、マヌケな質問でした。「この包み紙ですね・・・。」そこで会話は止まってしまうのかと思っていると以外な答えが返ってきました。「実は、余りの包装紙を取ってあるので、お持ちの文庫本のカバーにいかがですか?」と、Bさんは、ギフトの包装に使った包装紙の余りを、差し出してくれました。近くで見ると、本当に素敵な包装紙で、大きさも丁度、文庫本を覆いかぶせるのに程良いサイズでした。お店のマスターに、ハサミを借りて形を整え、文庫本に沿って織り上げると、あっという間にブックカバーが出来上がってしまいました。すると、会話が終わってしまったので、私は、先ほどの続きのように、紅茶を飲んでは、文庫本を読みふけっていました。その時です。出入り口付近で、「カランコロン」という、鐘の音が聞こえてきました。急いでそちらに視線を送ると、白髪の初老のお婆さんが、杖を付いて、息を切らして店内に入って来ました。「わるいねぇ。待たせたねぇ。」と、Bさん目掛けて歩いてきますが、途中で、よろけて転びそうになってしまいました。慌ててBさんが、席を立ち支えに行くと、Bさんにもたれ掛るように歩きながら、やっと私の隣の席まで来ました。「紅茶で良いのかしら?」とBさんがお婆さんに聞くと、「お願いします。」と頭を下げ、お財布からお札を取り出そうとするので、「今日は、ダメですよ。」と、鞄にお財布を仕舞われてしまいました。お婆さんは、ニコっと舌を出すと、可愛くお澄ましして、紅茶を待つ仕草をしました。Bさんが洗面所に行ってくると席を立つと、お婆さんは、「素敵なブックカバーね。」と私に、声を掛けてきてくれました。ギフトの事は、Bさんより先には言えないので、「ありがとうございます。」とだけ、告げると文庫本に視線を戻しまします。マスターが、お婆さんとBさんに紅茶を運んで来たので、お婆さんは、「これよね。」と言って、カップを指差しました。「あっ」と思わず、声が出てしまったのですが、カップの柄が、先ほどブックカバーに頂いた包装紙の柄と全く同じだったのです。お婆さんは、ニコニコして紅茶をすすり、マスターに、「よく壊さずに使ってくれていましたね。」と、話かけました。「その節は、どうもありがとうございました。お陰で、こちらも40年周年を迎えました。」とお礼を言うと、洗面所から戻ったBさんが、ギフトをお婆さんに手渡しました。お婆さんは、立ち上がって、こちらをどうぞと、綺麗な包装紙に包まれたギフトをマスターに手渡しました。3人の会話から、どういったご関係なのかは、伺い知れなかったのですが、素敵に包装されたギフトと、同じ柄のティーカップと、ブックカバーの柄は、3人にとって、何か大事な思い出を形づくっているのに違いないと感じました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です